海外赴任・留学・一時帰国・移住などなど、こういった場合の児童手当ってどうなるの?
という疑問の答えを集めました。
児童手当は海外在住の場合もらえるの?
家族で海外移住の場合
児童手当が支給されるかどうかは、原則として、支給対象の子どもがどこに住んでいるのかで判断します。
家族で海外移住するようなケースの場合、子どもの住所も親の住所も日本国内にないので、児童手当の支給はありません。
ちなみに、長期(概ね1年以上)で海外移住する場合は「海外転出届」を自治体に提出しなければなりません。
海外転出届を提出すると、住民基本台帳から住民票が徐票されます。
海外転出届の提出を忘れると、住民票が残ったままになるので、もしかしたら児童手当が受給できるかもしれません。
しかしこれは不正受給となります!
もちろん返還を求められますし、悪質だと判断されれば刑事罰に問われるかもしれません。
そもそも海外転出を出さず住民票が残ったままだと、次のような問題が発生する可能性があります。
- 住民税、国民年金、国民健康保険の支払いが必要になる
- 税金の滞納が発生する
- 正当な理由なく届出をしない場合は、5万円以下の過料に処される
児童手当だけもらったところで、絶対に損します。
海外転出届は必ず提出しましょう。
子どもだけが海外に住む場合
親は日本に住んだままで、子どもだけが海外に留学する場合など、子どもの住所は日本にないため原則は児童手当を受給できません。
ただし以下の要件に当てはまるときは、児童手当の受給が可能となります。
- 児童が日本国内に住所を有しなくなった前日までに日本国内に継続して3年を超えて住所を有していたこと。(日本国内に住所を有しなくなった日の前日から過去6年間に、のべ3年を超えて日本国内に住所を有していた場合も含む)
- 児童が教育を受けることを目的として外国に居住しており、父母または未成年後見人と同居していないこと。
- 児童が日本国内に住所を有しなくなった日から3年以内のものであること。
詳しくは*受給者の住んでいる自治体に問い合わせてくださいとのことです。
*受給者とは一般的には親のことで、実際にお金を受け取る人のことです。子どもは児童手当の支給対象者になります。
親の片方が海外に単身赴任する場合
基本的に児童手当は、両親のうち年収の高い方の親に振り込まれます。
年収の高い方の親が単身で海外赴任する場合、児童手当の受給者を日本に残る方に変更すれば、継続して児童手当の支給を受けられます。
受給者の変更手続き方法は、海外赴任する親が「受給者事由消滅届」を提出し、続いて日本に残る親が「認定請求書」を提出します。委任状があれば、どちらか片方だけで手続きすることができます。
注意点として、児童手当は申請した翌月からの支給なので、受給者の海外赴任が決まったらできる限り速やかに手続きを行うことです。そうしないと支給されない月が出てきてしまうかもしれません。
両親が海外に居住し、子どもだけ日本国内に残る場合
両親が仕事の都合で海外に赴任せねばならず、子どもは学校の都合で日本に残る、こういった場合もあるようです。
すごくレアだと思いますが、次のような事情ならあり得るかなと。
子どもが、苦労して入った難関私立中学に通っていたりだとか、スポーツや芸術分野で優れた才能があり、日本の環境で練習を続けたいとか。
まぁ理由は各家庭さまざまだと思いますが、いずれにせよこの場合は子どもが日本で生活をしているので、児童手当は問題なく支給されます。
受給者は日本で子どもを養育している人になります。
祖父母に預ける場合、祖父または祖母を「父母指定者」として指定すれば受給できます。
また子どもが寮などに入っている場合でも受給できるようです。
注意点として、とにかくレアなケースなので、必ず子どもが住民票を置いている自治体に問い合わせるようにしてください。自治体によって対応や手続きの仕方が異なる可能性があるためです。
こういったレアケースの場合、ネットに書いている情報だけで判断するのはやめたほうがいいです。
海外から一時帰国する場合の児童手当
一時帰国で児童手当を受給できる条件
支給対象者の子どもが、年に1回以上一時帰国している場合は、児童手当をもらえる可能性が高いそうです。
- 帰国時に住民票を日本に移す
- 1年以内に一回以上(一定期間)帰国している
- 両親のうちどちらかの住民票が日本にある
- 毎年6月に現況届を提出できる
これらの条件に当てはまる場合は、帰国期間中だけでなく年間を通して児童手当を受給できるかもしれません。
自治体によって対応や判断が異なるようなので、必ず自治体に確認するようにしましょう。
そもそも一時帰国で住民票を移せるのか
一時帰国時に住民票を日本に移すことができない場合もあるようです。
- 本帰国ではなく、再び日本を離れることが明らか
- 一時帰国の滞在期間が短い
- 一時帰国中の生活本拠がホテルなどになっている
こういった場合は、転入届が受理されず住民票を移すことができないので、児童手当も支給されないとなります。
ただ、転入届を受理するかどうかの基準は自治体によって異なるので、必ず問い合わせてください。
児童手当だけに注目すべきではない理由
両親が日本に住んでいて、子どもが一時帰国する場合は、住民票を日本に移して児童手当を受給できるように動いたほうがいいと思います。
家族全員で海外移住していて、家族全員で一時帰国する場合は、住民票を移すかどうかはよく考える必要があります。
以下のメリット・デメリットを考慮したうえで判断するとよいでしょう。
一時帰国で住民票を日本に移すメリット
- 医療費負担が減る
- マイナンバーが発行される
- 児童手当が支給される
- 子どもを就学させられる
これらのメリットがあります。
海外では医療費が高額なので、日本にいるあいだに保険診療を受けるほうが自己負担を抑えられます。
マイナンバーに関しても、最近では海外送金する際に必要だったりするので、発行メリットがあります。
一時帰国の期間が長期に及ぶ場合は、子どもを就学させないわけにはいかないので、住民票を移す必要があります。(公立のが学校に就学させるなら)
デメリット
- 国民健康保険や国民年金の支払いが発生する
- 税金の支払いが発生する
これらのデメリットがあります。
ただし、住民税に関しては1月1日時点で日本国内に住民票があることと、前年に日本国内で所得があることの二点を満たした場合に納税義務が発生するので、必ずしも納めるとは限りません。
1年以上の一時帰国の場合
日本から海外に転出・海外から日本に転入、いずれの場合でも1年を超えて定住する場合は住民票を移すのが一般的です。
1年未満の場合であれば住民票を残したまま移住しても問題は起こりにくいようです。
言葉的には、1年未満であれば移住ではなく「短期滞在」になるそうです。
公務員が海外赴任する場合の児童手当
前回の記事 児童手当について:高校生,第3子,拡充,支給日,所得制限など・まとめ でも触れたように、公務員の場合、児童手当は住んでいる自治体ではなく、職場から支給されることになっています。
ということは、公務員が職場の命令で海外赴任するときは、そのまま職場からの児童手当の支給が続くのでしょうか?
調べてみました。
・・・・
すみません!
結果は、よくわかりませんでした。
これに関してはなかなか情報が出てきません。そういう状況になったら直接職場に問い合わせる必要があります。
ただ予想はできます。
これまでの原則からすると、支給対象となる子どもが日本国内に残るなら、継続して児童手当は支給されるはずです。
一方、公務員の親の海外赴任に伴い、家族帯同で海外居住する場合は児童手当は支給されないと思います。
こういう制度においては、一般人と公務員で違いがあると問題になると思いますので、同じ条件のはずです。
海外留学する場合の児童扶養手当について
ひとり親家庭などに対する手当として、児童扶養手当がありますが、子どもが海外留学する場合この手当はどうなるのでしょうか?
調べてみました。
住所が日本国内にあるかどうかで判断
児童扶養手当法の第4条の第2項を確認すると、支給しない要件として「日本国内に住所を有しないとき。」とあります。
夏休みだけの短期留学などの場合、住民票を移したりはしませんから、児童扶養手当もそのまま継続して支給されますし、受給しても問題ないはずです。
1年以上に及ぶ長期留学の場合、住民票を移すことになるので、児童扶養手当の支給はなくなります。
長期留学中でも受給できる可能性があると書いてあるのは児童手当
この記事の 子どもだけが海外に住む場合 で述べたように、長期の海外留学でも児童手当は要件に当てはまれば支給されます。
児童扶養手当の場合は、要件に海外留学に関する記述がないので、まずは自治体へ個別に相談する必要があります。
児童手当と勘違いして「支給されないのはおかしいじゃないか」とならないようにしましょう。
海外(諸外国)の児童手当・比較
わかりやすいように、日本円に換算して紹介します。(1ドル145円、1ユーロ157円で計算)
また合わせて、各国の出生率も記載します。(日本の2022年の出生率は過去最低で1.26。韓国が世界最低で0.78)
フランスの児童手当
生まれてから3歳までは月に約1.4万円、もしくは約2.8万円。(親の収入が多い場合は、1.4万円になる)
この3歳までの支給は「基礎手当」と言われ、すべての子が対象。
第2子以降だけ対象になるのが「家族手当」
第2子が月に約1.9万円。第3子以降が月に約2.6万円。20歳まで受け取ることができる。
しかも14歳以上には約8千円加算される。
フランスの出生率は1.80。先進国の中では高い。
ドイツの児童手当
- 第1子と第2子は月に約3.0万円
- 第3子は月に約3.1万円
- 第4子以降は月に約3.5万円
これらを18歳まで受け取れるようです。
ドイツの出生率は1.53。
ちなみに児童手当の支給を受けずに、「児童控除」と呼ばれる所得控除を受けることもできるようです。
スウェーデンの児童手当
- 0~3歳未満 約3.1万円
- 3~6歳未満 約2.3万円
- 7~18歳未満 約1.9万円
スウェーデンの出生率は1.66。高めです。
イギリスの児童手当
15歳以下の子どもを持つすべての親が受け取れる。外国人でも永住権があれば申請可。
第1子は月に約1.6万円
第2子以降は月に約3千円
イギリスの出生率は1.56。
アメリカの児童手当
アメリカでは児童手当はなく、その代わりに17歳未満の扶養児童1人につき、約14万5千円の税額控除がある。
アメリカの出生率は1.67。
アメリカの出生率は高めですが、移民が多いことも関係していると思います。
韓国の児童手当
世界最低の出生率0.78となっている韓国では、このままでは国が消滅するという危機感のもと様々な少子化対策を行っています。
2024年からは
0歳の乳児には毎月約11万円、1歳児には毎月約5.5万円を「親給与」という名目で支給するとのことです。
また、親給与とは別に16歳未満の全ての子どもに毎月約1.1万円の児童手当も支給されます。
韓国と日本の少子化対策について
韓国では上の章で紹介したようなお金の支給だけでなく、一定規模以上の企業には保育施設の設置を義務化、5歳児まで保育施設無料(所得制限なし)など、様々な支援を行っています。
韓国政府が2006年から2023年までのあいだに投じた少子化対策の予算は日本円にして28兆円にのぼっています。
韓国の人口は約5150万人で、日本の人口約1億2240万人の42%です。
先ほどの28兆円という額を日本の人口規模に直すと、約67兆円となります。すごい額ですね。
日本も2023年現在、年間約4.8兆円を少子化対策予算として使っています。
2024年からはさらに3.6兆円ほど上乗せして、年間8.4兆円の予算を使う予定です。
これだけ多くの予算を投入したのにも関わらず、韓国も日本の今のところ目に見える効果は表れていません。
果たして、お金さえ投じれば出生率が上がるのか?
疑問の残る結果となっています。
私は、人々の価値観や生活スタイルも変わらないと難しいのではないかと思います。